昨日一冊の小説を読んだ。
ぽにきゃんBOOKSから2014年11月刊行された「廃線上のアリス」。
読み終わって、作中に描かれた景色を思い浮かべた時にうずうずした。
「行きたい!」「きっとモデルになる土地があるはず!」
ツイッターで文字媒体で描かれる舞台訪問も楽しいかもしれないとぼそっとつぶやいた時に反応して下さった方がいたことも後押しとなった。
■「廃線上のアリス」とは?
「廃線上のアリス」とは2014年11月3日にぽにきゃんBOOKSより刊行されたライトノベルである。
著者:マサト真希
イラスト:フカヒレ
不登校の十七歳・譲羽朗は、東京を逃れ生き別れの父が住む愛媛県の小さな港町を訪れる。
そこで出会ったのが、廃線を裸足で歩く不思議な少女「アリス」。
一冊の本がきっかけで近づく二人だが、アリスはかたくなに正体を明かさない。
そんな折り、朗は町で「廃線の幽霊」のうわさを耳にする……。
恋した少女は何者か。本当に夏の亡霊(ゴースト)か。
切なく鮮烈な青春ラブストーリー、登場!
■作品の舞台(モデル)
まず作中やあとがきで舞台について描かれたことを抜き出してみた。
“午後七時のターミナル駅”
…東京駅
“サンライズ出雲”
“岡山行き”
…おそらくサンライズ瀬戸か。自分は関西から向かうのでここはスルー。
“都内→上小湊”
…中国方面に上小湊という駅はないのでおそらく架空か変名と判断。
“岡山駅”
“六番線から出る特急しおかぜに乗って、松山で小海線に乗り換え”
“あと十分でしおかぜは発車”
…夜行列車で早朝の岡山着、駅員に質問をしている間に出発時刻が迫っている
→07:23岡山発 しおかぜ1号松山行(6番線) 10:05松山着
“松山で、ぼくは小海線に乗り換えた”
…小海線は長野県の路線なのでこれも変名と判断。
“一、二時間に一般の時刻表と、一両だけの電車”
“上小湊駅到着は昼過ぎ”
“上小湊は、小さな、とても小さな無人駅”
“こじんまりした駅舎と、コンクリートのプラットフォームだけ”
“すぐ目の前は瀬戸内海で、コンクリートを蹴って飛び込めそうな距離”
…有名な予讃線下灘駅と判断。
→11:40松山発 予讃線宇和島行(3番線発) 12:25下灘着
“振り返れば、駅舎の背後に迫るのは緑の山々”
“片隅に、ぽつんと置かれた公衆電話”
…行って確かめよう
“駅舎を出たら線路沿いに西へ向かえ。踏切を越えて道沿いに行くと、小海線から枝分かれした廃線がある。それに沿って、だいたい二十分くらいかな、歩け”
“青い屋根の雑貨屋”
…これは架空らしいので切り捨て
“灯台は防波堤の突堤にあった”
…グーグルマップで見ると駅から徒歩30分ほどの突堤の先に確認できた。
“松山方面とは逆方向”
“途中で海を離れて山の中へ入る”
“その駅は「八坂」”
“駅舎から出たら周囲は開けていて、道幅の広い二本の県道が交差していて”
“赤い鉄骨の橋”
“河川敷の向日葵畑”
…グーグルマップで肱川沿いの駅や橋を確認し、五郎駅と判断
→五郎駅近辺でひまわり畑の情報を探す。
参考:大洲市畑の前地区ひまわり畑 [ひまわり畑ネット]
■アリスとアリサに会いに行ってみよう!
と、ここまででおおよその目星はついたので後は行ってみよう!と始発の新幹線で岡山へ。
突発日帰りなので余裕を持って下記スケジュールで行くと決めた。
06:17新神戸発 ひかり441号
07:04岡山着
07:23岡山発 しおかぜ1号松山行(6番線)
10:05松山着
11:40松山発 予讃線宇和島行(3番線発)
12:25下灘着
13:47下灘発 予讃線伊予大洲行
14:38五郎着
15:40五郎発 予讃線松山行
17:10松山着
17:37松山発 しおかぜ28号岡山行(1番線発)
20:11岡山着
20:22岡山発 のぞみ190号東京行(23番線)
20:55新神戸着
主人公の朗は父親から届けられた切符を持って何も調べずに岡山へ。
岡山から上小湊(下灘)への行き方が判らないとなっているが、ちょっとまて!しおかぜの特急券があるだろ!岡山→松山だから愛媛に行くのは判るんじゃないの?って思ったけど、鉄道の切符のことはよく分からないからそっと放置。
松山駅での乗り換えの間のことは何も書かれていないので、朗がどう過ごしたのかは分からない。
途中下車したのかな…
駅のホームでぼーっと待っていたのかな…
お腹空かせてうどんでも食べたのかな…
なんて考えて途中下車&朝食タイム。
松山駅の改札は今でも手動。
駅前。高いビルがないです。
路面電車。
ひょっとしたら朗が食べたかもしれないうどん屋やコンビニ。
同じホームに上り用と下り用の時刻表がありました。
松山から揺られること45分…
着きました!
“すぐ目の前は瀬戸内海で、コンクリートを蹴って飛び込めそうな距離”
朗が到着した時は雨だったので、“最果ての終着駅”と感じたのだろう。
“振り返れば、駅舎の背後に迫るのは緑の山々”
駅の中には“ぽつんと置かれた公衆電話”はなかったけど撤去されたのかな?
朗が歩いた時とは違って雨模様じゃないから東京からある意味都落ちしてきてどん底気分を味わうことはできなかったけど、どこまで行けばいいのか分からないまま歩くことが不安なのは同じ。(こちらは時間的な意味で不安だった)
“駅舎を出たら線路沿いに西へ向かえ。踏切を越えて道沿いに行くと、小海線から枝分かれした廃線がある。それに沿って、だいたい二十分くらいかな、歩け”
朗が歩いた街はのどかで静かでのんびりした空気が漂っていた。
山の上の借り家はきっとあの辺りなのかな…
父親が郵便物を局留めにしていた郵便局はきっとこれかな…
父親が駆け落ちの待ち合わせ場所に指定した灯台のそばまで行きたかったけど、電車の時間に間に合わないと判断。
ところで、朗がアリスを誰にも見られない場所で二人っきりで描きたいからと始発で向かう描写があるのだけれど、実際の時刻表は下記画像なので、これは物語の創作上の改変なのだろう。
下灘駅のひまわりが枯れかけだったので、これから行く場所はどうなってるだろう…
アリスが笑顔で楽しんだ向日葵畑は見れないかもしれない…
そんな心配をしながら向かった五郎駅。
“駅舎から出たら周囲は開けていて、道幅の広い二本の県道が交差していて”
“赤い鉄骨の橋”があって
“河川敷の向日葵畑”!
作中では橋の下にひまわり畑があることになってたけど、時期をずらして上流側から下流側で咲かせてるのかもしれない。
“セーラー服の美しい少女が、青々と繁る葉を両手でかき分け、太陽みたいな花々を見上げ、いくつもの黄金の色の花弁に触れていく”
きっとこの中をアリスが駆け回ってたのか…そんな妄想をしながらちょっぴり曇った空の下、写真を撮る。
本当はもっと上小湊(下灘)の町を歩きまわったり、七海が通ってる学校探したり、山の上の家を観に行ったりとしたかったが、日帰りという制約があるので、そこはスパっと諦め。
でも夕陽に照らされる下灘駅の写真撮りたかったなあ…
今回は画としての描写がないラノベの舞台訪問をしたけど、文章や心情を頼りにこう見えていたのかな?と考えながら歩いたり写真を撮るのはとても楽しかった。
■最後に
「廃線上のアリス」は1巻に続いて2巻も出ています。
どちらも明るく楽しい内容とは言えないけれど、どん底から前を向いて這い上がろうとする主人公やその主人公に引っ張られるヒロインの距離感の描き方がとても良い作品なので是非読んでみて下さい。
そして読めば何故アリスとアリサなのかも判るはず。
2巻の舞台はちょーっと遠いから誰かが行くのを期待。